気管支喘息は、気管支（肺に空気を送る通り道）に炎症が生じ、咳や息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴（ぜんめい）を引き起こす病気です。
症状は季節や天候の変化、ストレス、運動、アレルゲン（花粉やハウスダストなど）によって悪化することがあります。喘息は一見すると治ったように感じることもありますが、気道の炎症は持続しているため、適切な治療を継続しないと再発や悪化を引き起こしやすいため、適切な治療を継続しないと再発や悪化のリスクが高まります。

喘息の診断には、患者さんの症状や発作の状況を丁寧に伺うことが大切です。そのうえで、呼吸機能検査やアレルギー検査を行い、気管支の状態やアレルゲンの有無を確認します。
特に症状が軽い場合や、症状が出たり消えたりする場合は見過ごされがちです。また、咳だけが長引く「咳喘息」との鑑別も必要です。「夜や早朝に咳が続く」「風邪をひくと長引く」「運動すると息苦しくなる」などの症状がある方は、一度ご相談ください。

喘息の治療は、気道の炎症を抑える「コントローラー治療」と、発作時に症状を和らげる「リリーバー治療」の2本柱で行います。
コントローラー治療（長期管理薬）
主に吸入ステロイド（ICS）を使用し、気道の炎症を鎮めることで発作を予防します。ICSは吸入によって直接気道に作用し、全身への影響が少ないため、安全性の高い治療法です。また、必要に応じて気管支拡張薬（LABA）を併用し、症状をコントロールします。
「ステロイドは怖い」と心配される方もいますが、ICSは全身に影響を及ぼしにくく、適切に使用すれば副作用のリスクは最小限に抑えられます。むしろ治療を中断すると、発作が悪化する可能性があるため、継続的な管理が重要です。
リリーバー治療（発作時の薬）
発作が起こった際には、短時間作用型β2刺激薬（SABA）などの吸入薬を使用し、気管支を拡げて症状を緩和します。ただし、リリーバー治療だけでは根本的な炎症は改善しないため、コントローラー治療を併用することが大切です。

喘息は、症状が治まると「もう治った」と思いがちですが、炎症そのものが残っている場合があります。治療を自己判断で中断すると、再発や重篤な発作を引き起こす可能性があるため、医師の指示のもとで治療を続けることが大切です。また、日常生活において次のような点に注意することで、発作のリスクを減らせます。
• アレルゲンの管理：ハウスダストやダニ対策として、こまめな掃除や寝具の管理を行いましょう。
• 気温や湿度の調整：寒暖差の大きい季節や乾燥する時期は、マスクの着用や加湿を心がけると良いでしょう。
• 吸入薬の正しい使用：吸入薬は正しい方法で使用しないと十分な効果が得られません。当院では、患者さん一人ひとりに合わせた吸入指導を行い、治療効果を最大化するサポートをしています。

通常の吸入薬で症状が十分に改善しない「重症喘息」の場合、抗体製剤（生物学的製剤）を用いた治療が選択肢となることがあります。
抗体製剤は、喘息の原因となる特定の炎症物質（IgEやIL-5など）を抑えることで、発作の頻度を減らし、症状をコントロールする効果が期待できます。現在、日本では以下のような抗体製剤が使用されています。
• オマリズマブ（抗IgE抗体）：アレルギー性喘息の患者さんに適応
• メポリズマブ・ベンラリズマブ（抗IL-5抗体）：好酸球性喘息の患者さんに適応
• デュピルマブ（抗IL-4/IL-13抗体）：重症のアトピー型喘息に適応
当院では、重症喘息の患者さんに対して、適切な診断を行い、必要に応じて基幹病院と連携しながら最適な治療を提案しています。喘息の症状がなかなか改善しない方や、頻繁に発作が起こる方は、ぜひ一度ご相談ください。

気管支喘息は、適切な治療と管理により症状をコントロールできる病気です。「もしかして喘息かも？」と思われたら、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。患者さん一人ひとりに最適な治療を一緒に考えていきます。